小泉政府は「テロリズムに対する資金供与の防止に関する国際条約」の批准とそれに対応する国内法として「公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金の提供等の処罰に関する法律」を国会上程した。現在、すでに衆議院を通過して参議院に送付されており、連休明けにも成立が目論まれている。
条約は九九年に国連で採択されたものの、「テロ組織」の定義をめぐる対立などから、昨年九月までに批准していたのはイギリス、ウズベキスタン、ボツワナ、スリランカの四カ国にすぎなかった。しかし昨年九月十一日のアメリカ中枢をねらった同時テロを受けて、すでに二十カ国が批准するまでになり、日本も有事法制の動きの中で急遽条約を批准し、それに見合う法律として「テロ資金処罰法」を出してきたのである。ところがこの新法はテロ批判に乗じてあらゆる運動に弾圧を拡大できることを狙ったとんでもない悪法であり、ほとんど議論もされないままに強行採決されようとしているのだ。
以下に新法の問題点をいくつかあげてみる。
第一に、「公衆等脅迫目的の犯罪行為」とは、公衆又は国若しくは地方公共団体若しくは外国政府等(条約その他の国際約束により設立された国際機関も含む)を脅迫する目的をもって行なわれる犯罪行為をいうとされ、国際的な犯罪に限らず、一国内の行為をも対象としている。その犯罪行為とは、殺人、傷害、誘拐、人質をとる、航空機や船舶の航行に危険を生じさせる行為、爆発物の使用、放火などとされ、政治的な目的をもった実力闘争をすべてひっくるめて弾圧の対象としているのだ。
第二に、「情を知って、公衆等脅迫目的の犯罪行為の実行を容易にする目的で資金を提供した者は、十年以下の懲役又は千万円以下の罰金に処する」(第二条)「犯罪行為の実行のために使用する目的で、資金の提供を要求し、若しくは勧誘し、又はその他の方法により、資金を収集したときは、十年以下の懲役又は千万円以下の罰金に処する」(第三条)とあり、資金提供した者も提供を受けた者も、さらにその未遂まで罰するとしている。これは、刑法にはない「カンパ罪」の新設である。犯罪行為が実行されたかどうかが問題ではなく、資金提供それ自体が罰せられるのだ。
第三に、何がテロ行為か、何がテロ資金に当たるかなどの判断はすべて警察・検察が決めることになり、恣意的判断で簡単に弾圧が拡大されてしまう。「情を知って」などと暗黙の了解があったとすれば何でも処罰できる。「犯罪行為の実行を容易にする目的」というのもきわめてあいまいな表現で、いかようにも解釈できる。
例えばパレスチナ難民支援のカンパなどについてもそれがテロへの資金提供になると判断されることもありえる。かつて南アフリカのアパルトヘイト廃止運動や、インドネシアの東チモール独立運動も、時の政府からテロ活動だとして弾圧を受けている。最近、テロという言葉が独り歩きしている嫌いがあるが、その定義は極めて難しいものだ。恣意的な判断の結果、救援活動、裁判闘争のカンパにしても、テロ組織へのカンパとされれば処罰されかねないのだ。
さらに組織的犯罪対策法の一部を改悪することも今回の法案は含んでいる。
今回のテロ資金供与防止条約批准とテロ資金処罰法の攻撃は、まさに権力と闘う組織をテロ組織としてその資金源を断つことで壊滅させようとすると同時に、さまざまな国際連帯の活動さらには救援やさまざまな支援、カンパ活動など民衆の広範な運動への参加を萎縮させるねらいがあることは明白である。
戦前の治安維持法にあった「目的遂行罪」(結社の目的遂行のためにする行為)や破防法の団体のためにする行為の禁止(第八条)以上に幅広く弾圧の網を広げる危険性があり、より治安法としての性格をもつと言わざるをえない。こんな悪法を許してはならない。
反対の声を、より大きく上げていこう。