支配の危機は更に深まる
菅民主党政権メルトダウンをめぐる・政治・が喧しい。しかし今の騒動からは、グローバル資本主義の危機を脱しどのような社会を展望するのか、腐敗・腐朽した国家をどうするのかが全く見えてこない。日本の支配階級総体が荒波に翻弄され操舵手のいない航海を続けているのだ。
暴露された合衆国外交公電に登場する・帝国・の支配者たちの姿には腐臭が漂っている。民主党政権をめぐる動きも同じ穴のむじなの争いにすぎない。一年半の間に民主党政権は、普天間基地県外移設などの公約反故、治安法では時効撤廃、死刑執行、APEC戒厳態勢など恥知らずな攻撃を次々と仕掛け、泥縄式に・日米中正三角形・東アジア共同体論から日米韓安保強化・環太平洋経済連携協定へ・・生活第一から強い財政・経済成長優先へ・の路線転換を強行してきた。民主党政権は、自公政権の新自由主義路線破綻の手直し、社会統合重視の・期待・を背負って登場したが、新自由主義の危機第二幕と東アジアの政治的・軍事的緊迫の中で早々と破綻し、自公政権以上の悪政に突進しはじめているのだ。
新自由主義的資本主義の危機は世界大であり、世界恐慌寸前の経済危機と反・テロ・戦争破綻の政治・軍事危機が相乗して、その解決策を見出し得ないまま国益を盾に相争っているのが、この間の大きな特徴である。しかも日本の政治危機は、自公→民主党政権がメルトダウンし既成政治液状化・総保守化が深まる中で、防衛省・法務省・警察庁、財務省など腐朽しきった官僚が突出するという末期症状を呈している。暴力装置と財政を握る官僚中の官僚たちの突出であり、武器輸出三原則緩和や恒久的海外派兵法策動、あるいは法人税減税や消費税アップ策動など、自公政権末期に画策して果たせなかった政策が強行されてきているのだ。治安・刑事政策でも『テロの未然防止に関する行動計画』『犯罪に強い社会を実現するための行動計画2008』は民主党政権発足によっても何一つ改編されず、逆に児童ポルノ対策・監視カメラ増設などで補強されてきている。
もちろん国家意思が千千に乱れて対立し、支配が機能不全に陥っている中での官僚の突出にすぎない。中曽根は菅首相を・市民的保守・と評し中道右派・左派の二大政党制を展望したが、しかしその願望を超えて、政治支配の危機は更に深まっている。二大政党制どころか、保守・リベラルを問わぬ政治的権威の失墜、検察・警察など官僚の腐敗、企業社会統合の崩壊は、自公政権を拒否し、民主党政権も見捨てるという、選挙毎に変わるジェットコースター的な世論の振幅を生みだし、ナルシズム的排外主義すら台頭してきている。この大流動の基底には、選挙によってしか意思表明できない、民衆のやりばのない閉塞感と怒りがある。
共謀罪法案の甦りを許すな
こうした政治危機の中で、今通常国会に共謀罪法案の四度目上程が画策されている。実行行為処罰原則を放棄し・話し合っただけで罪になる・共謀罪は、広汎な反対運動によって三度も廃案に追い込まれた悪法であり、〇八年衆院選マニュフェストで・共謀罪を新設しない・と謳った民主党政権の最後の公約破りへの動きである。昨年八月『毎日新聞』が・ウイルス作成罪創設の来春通常国会上程、共謀罪と切り離し先行させる・と報じた。・先行させる・とは共謀罪が続くということである。菅政権が揺れに揺れる今、法務省はインターネット規制法・強制執行妨害罪拡大はもとより、共謀罪そのものの新設策動を狙っている。
今回の上程策動の特徴は、法務省がサイバー犯罪条約批准のためのインターネット規制法、強制執行妨害罪拡大・重罰化を前面に押しだし、更に、国連薬物犯罪事務所見解やマネロン(資金洗浄)・テロ資金対策を任務とする金融活動作業部会「対日審査報告」(〇八年一〇月)をテコに共謀罪新設・国際的組織犯罪条約批准策動を進めることにある。一〇年近い攻防で一敗地にまみれた法務省・外務省による共謀罪法案の全面的な甦り策動以外の何物でもない。『読売新聞』などはあたかもウイルス作成罪新設のみであるかのごとく報じているが、情報操作に惑わされるわけにはいかない。
法案の全貌はまだ定かではない。しかし上程されるとすればその内容は、国会審議でズタズタになった法務省原案を民主党や自民党の修正案によってカモフラージュしたもの以外にはありえない。審議での修正点は 対象犯罪の限定、 共謀以降の顕示行為を要件とする、 会社や労働組合に適用しないと仮装する、そして 最大で国際的犯罪に限定して適用するということに過ぎず、・話し合っただけで罪にする・共謀処罰の本質はなにも変わらない。 ~ の修正をしても、たとえばグリーンピースに共謀罪弾圧を仕掛けうるのだ。しかも〇六年春の自公による民主党案・丸呑み詐欺・事件以降も、外交公電墨塗りや国連『立法ガイド』など条約をめぐる論争が続き、・国内法原則に反する・条約になぜ調印し共謀罪新設に固執するのか大きな疑問が生じている。
アメリカで検察の愛人と言われる共謀罪を、証拠を捏造するほどに腐りきった日本の警察・検察に渡せば、弾圧のオールマイティの武器となる。労働運動・市民運動つぶしの共謀罪やインターネット・コンピュータ規制を強化する悪法を制定させるわけにはいかない。
戦争・治安法ラッシュを反治安法戦線構築で打ち砕こう
今春の攻防は、〇三年法案上程―自公政権との対決が主軸となった時とは大きく異なり、  民主党は・共謀罪新設せず、留保付きで条約批准・法務・外務官僚は・共謀罪を微修正して制定、留保なしの条約批准・ 私たちは・共謀罪も条約も反対・という新たな状況の中での闘いになる。共謀罪絶対反対・国連条約批准阻止のうねりを早急に創りだしうるか否か、さらにインターネット規制反対の声の弱さを克服し反戦・反治安法戦線との更なる連携強化を創りだしうるか否かが、当面の私たちの課題である。
今、ウィキリークスによる外交公電暴露や警視庁外事三課資料・尖閣ビデオ流出を、インターネット規制のエスカレートに結びつける動きが急激に強まっている。アメリカではツイッターやブログなどを全面的に盗聴できるようにする法案が準備され、日本でも通信履歴保存、ウイルス作成罪新設などインターネット・コンピュータを支配・管理する動きが強まっている。また共謀罪とセットとされながらこれまで隠されてきた・おとり捜査・司法取引・盗聴拡大・などの・新しい捜査手法・も、検察・警察の腐敗露呈を逆手にとって導入が画策されている。警察庁主導で都道府県の暴力団排除条例制定策動が進み、足立区では反社会的団体規制条例も制定された。さらに通常国会には、昨年二月の法制審答申を受けて、重罰化と保護観察強化を狙う刑法等の一部改悪案も上程される。実刑と全部執行猶予を定めた刑法に一部執行猶予を導入し、保護観察の特別遵守事項として社会貢献活動を新設するというものである。また・尖閣問題・などを口実に営業秘密や国家機密の漏えいに関わるスパイ防止法も画策されている。新たな戦争・治安法のラッシュと以降の激震を見据えれば、反治安法戦線構築で、共謀罪はもとより一切の戦争・治安法と対決することが問われていよう。
支配が大きく揺らぎ、戦争・治安管理国家化がエスカレートし、労働者民衆の閉塞感と怒りが強まっている。労働者民衆の闘いの自由と団結を勝ち取り、新しい未来を拓くために、何としても現代版治安維持法=共謀罪法案の国会上程を阻止しよう。共謀罪永久廃案―戦争・治安管理国家化を打ち砕く闘いに共に出立しよう。
石橋新一(破防法・組対法に反対する共同行動)