現在、急ピッチで進む「刑事司法改革」。その狙いは何か。端的に言うならば、それは、戦時司法体制への突入にほかならない。
戦時司法体制のキーワードは「さきに刑法を改正して、ある種犯罪の罰則の強化を図ると共に、戦時犯罪処罰の特例に関する法律を制定して、戦時下検察裁判の迅速適正を期し、一般犯罪の予防鎮圧に資し〜治安維持法をも改正強化して国内治安を確保し、思想国防の完璧を期した」(「大東亜戦争と治安維持の重要性」松坂広政検事総長・法曹公論1942年4月)とあるように、①迅速・簡易、②重罰化、③治安強化・思想弾圧である。
いままさに、このキーワードどおりに「刑事司法改革」が推し進められている。
まず、「司法制度改革」の最大の目玉として挙げられている裁判員制度。それは「個々の被告人のため」の制度ではなく(司法審意見書106頁)、「刑事手続に一般の国民の健全な社会常識を直截に反映させうる」ための制度(同41頁)とされている。
いったい「健全な社会常識」とは何であろうか。被告人に懲役14年を下した新潟少女監禁事件一審判決を想起すれば明らかである。「健全」ではない「犯罪者」には、ただひたすら重罰化の道しか残されていない。そして、裁判員制度は、刑事訴訟手続の改悪=被告人の防御権の切捨とワンセットである。
裁判員制度の下では、裁判員の負担軽減のために連日的開廷が原則であり、連日開廷の原則を法律に明示する(第9回検討会)、私選弁護人が連日的開廷に協力できない場合には併せて国選弁護人を選任することすら議論されている(同)。そして、迅速な審理実現のために、争点を明示する義務を被告人に負わせる(法務省・最高裁)、準備手続段階で主張しなかったことや申し出なかった証拠は公判で出させない(法務省)など新たな準備手続きの中で争点をできる限り絞り、被告人・弁護人に余計な争点を争わせないようにする。また、裁判所の訴訟指揮権を強化し、従わない弁護人には過料や懲戒の制裁が待っている(第10回検討会)。そして、裁判員制度の下でも供述調書をはじめとする書面は重要な役割を果たすとされ(法務省)、接見指定・接見禁止問題、保釈・令状実務の改善、全面証拠開示は闇に葬り去られたままであり、さらには取り調べの可視化については「審議会意見は〜将来の検討課題としており、それを捜査公判手続きの合理化の問題として議論するのは議論の蒸し返しになり適当でない」(第10回検討会)とまで言われている。このように、「国民参加」を売り物にした裁判員制度導入を梃子に、一方で重罰化が図られ、他方で迅速・簡易な刑事手続きの下、被告人の権利は極限まで切り縮められるのである。
そして、治安強化・思想弾圧の点では、昨今の相次ぐ治安立法の整備(99年8月組対法、99年12月団体規制法、2000年ストーカー規制法、02年テロリストによる爆弾使用の防止に関する国際条約に伴う関係法律整備法、02年公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金の提供等の処罰に関する法律等)に引き続く、共謀罪導入、そして国際的なテロ組織への対策を強化するためとして「反テロ法案(仮称)」制定の動き(03年1月20日付読売新聞)が注目されるべきである。
前者においては、実行行為なきまま共謀だけで処罰できる、すなわち共犯理論の解体による共犯処罰範囲の著しい拡大、後者においては、新聞報道よれば①テロ行為やその準備行為を行った団体、②テロ組織への資金提供や情報提供などの支援行為を継続的に行なっている団体を「テロ関連団体」と認定し、テロ関連団体の資産凍結や没収、新たな構成員の募集禁止等の活動制限のほか、テロ関連団体の「解散」等が目論まれており、いずれも団結破壊、団体・組織解体立法というべきであり、現行の治安体制を飛躍的に強化させるものである。
このように今まさに進められようとしている「刑事司法改革」は、まさに戦時司法体制を突き進むものである。しかし、これは何も今日に始まったことではなく、これまでの多くの弾圧事件にあらわれていることであり(数々の文書偽造罪の逸脱的適用、機関紙立証・近時では機関紙を媒介に文書偽造罪と「ゲリラ事件」を無理矢理結びつけ重罰化・長期投獄を図ろうとする事案もある、あるいは国労10・7弾圧のような直接的な団結破壊攻撃等)、権力側としてみればその集大成とでもいうべき段階に入っている。
多くの民衆・労働者が団結し、このような「刑事司法改革」の流れに否の声を上げていこう。