救援連絡センター

ごくいりいみおおい

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1 裁判員制度を巡る近時の状況

この夏、裁判員制度を巡る状況が、大きく変化した。

まず、7月27日、読売新聞は、政府が、裁判員制度が、第二の「後期高齢者医療制度」問題化し、政府批判が強化することを恐れて、法務省に広報活動の強化を指示したと報じた。その後、8月7日には、共産党と社民党が、裁判員制度の実施延期を求める見解をほぼ同時に発表し、同月15日には、民主党小沢代表が、民主党が政権を獲得すれば裁判員制度のあり方そのものを見直す決意を発言したという。

そもそも、裁判員法は、04年の国会において、ろくに中味を議論されることもなく、全会一致で成立した法なのであるが、このように、まさに情勢は一変した。今秋の臨時国会では、裁判員制度の是非、延期を含めた議論がなされることは間違いないであろう。

こうした情況は、最高裁、法務省、日弁連執行部にとっては、M7級の激震だったといえよう。日弁連執行部は、一連の動きに対抗し、8月20日、「裁判員制度が予定通り強く実施されるよう強く求める」との緊急声明を発表、各政党に対し、翻意と動揺阻止の働きかけを開始した。また、最高検の樋渡検事総長も、日本記者クラブで会見し、「実施して、やりながら改善していくのがいい」と、延期や再検討を求める共産、社民両党などの主張に反論している。8月 28日には、衆院法務委有志なるものが「国民は必ずしも制度を歓迎していないが、確実に実施すためには負担を極力減らす配慮が必要だ。日当も3万円に」と保岡法相に提言書を渡したようである。敵も必死だ。

2 状況変化の要因

このように、裁判員法を巡る情勢が、その法案成立後5年を経て、一変しつつあることには、いくつかの要因を指摘しうる。

第一に、実施まであとわずかというにも関わらず、圧倒的多数の市民がこの制度に拒否反応を示しているということである。よく指摘されるように、各種世論調査によれば、約8割の市民は、裁判員制度への参加に拒絶的意向である。このことは、裁判員制度なるものが、いかに市民の要求とは別のところで決められた出鱈目な制度であるかをよく物語る。市民の多くは、裁判員制度が、一部の論者らが言うところの「司法の民主化」などとは何の関係もなく、その実態は、「現代の赤紙」ともいうべき新たな義務の強制であることをよく感じ取っているのだ。

第二に、裁判員制度に対しては、法曹界の各層に強い反対の声が存在している。実を言うと、裁判所や検察庁の内部にも制度を疑問視する声は決して少なくない。弁護士会においては、新潟、栃木、大分の三会において、制度延期ないし見直しの決議がなされ、反対派の反撃が開始されつつある。そして、何より刑事弁護を真剣にやる弁護士であればあるほど、この制度への批判、疑問を強く持っているのだ。

そして、いずれもえん罪の被害者である元死刑囚の免田栄さんや氷見事件の柳原浩さんらもこの制度には明確に反対している。

3 裁判員制度は救援連絡センターの原則を破壊する

すでに本誌でも多数の方が指摘してこられたとおり、裁判員制度の導入とそのための公判前整理手続等を中心とする新刑事訴訟法が貫徹されれば、これまで救援センターが原則的として反弾圧闘争や公判闘争のあり方はほぼ破壊されてしまうだろう。

公判前整理手続における「争点整理」は、救援連絡センターの大原則である被疑者、被告人による黙秘権の行使を事実上困難にさせる機能を有する。そして、その手続は、非公開でなされるから、支援者は、裁判の肝心な部分のほとんどを傍聴することも出来ない。整理手続後の主張立証制限は、被告人弁護人の防御活動を確実に困難ならしめ、裁判長の訴訟指揮権の強化は、被告弁護側の訴訟活動を萎縮させ、活発な訴訟行為を封じる。開示された証拠を裁判批判のためのパンフ等に載せることも違法として許されない。そして、裁判員裁判では、原則、主観的併合は想定されていないので、これまで行ってきた統一公判の要求も論外になる。また、たった3日の連続開廷では、被告弁護側に十分な準備は保証されず、無罪の主張も、自己の行為の総括を深めることも困難となる・・・

裁判員裁判とは、実におぞましい制度だ。

4 「裁判員制度はいらない!大運動」の活動

我々「裁判員制度はいらない!大運動」は、昨年4月、裁判員制度の廃止を目指す市民、弁護士の団体として発足した。以後、今日に至るまで、各地で学習会、集会、街頭活動を積み重ね、さる6月13日には、日比谷公会堂において約1500人を結集する全国集会を実現させた。そして、8月11日には、共産、社民の延期論を受けて、改めて裁判員制度の廃止を訴える声明を発表している。

我々は、これまで、毎月の第2土曜日には、東京有楽町のマリオン前にてビラ撒き等の街頭宣伝を地道に行ってきているが、そこでの市民の反応はとてもよい。各種世論調査にいう8割の反対の声は、こうした我々のいわば現場感覚とも完全に合致するものである。街頭にて、我々が道行く市民と話をすれば、裁判員制度賛成などという人はほとんどいない。

我々は、こうした圧倒的多数の市民の声を自らのエネルギーとして、今後もその運動を強化していく。

5 秋の運動が決定的重要

我々は、小泉構造改革の時代に一気に成立したこの裁判員制度なるものは、郵政民営化、後期高齢者医療問題などと同様に、政府の新自由主義政策の産物であると考えている。また、裁判員制度は、市民に新たな義務を課す「現代の赤紙」として、国民にファッショ的意識を課すものであり、ひいては改憲攻撃の一環であると捉えている。すなわち、裁判員制度との闘いは、新自由主義、改憲攻撃との闘いの重要な一環をなすものだ。

そして、今年の秋の闘争が極めて重要である。

前述のとおり、各政党の態度が流動化し、今年秋の臨時国会では、裁判員制度が間違いなく、議論される。また、今年の11月頃には、来年の裁判員候補者となることを伝える通知が約30万人ともいわれる市民に送付されることになっている。このことにより、市民の制度批判の声はさらに強まっていくだろう。

こうした時期をとらえ、我々「大運動」は、11月末頃に、全国の多くの仲間たちとともに、裁判員制度実施阻止のための一斉行動を予定している。既にいくつかの地域では具体的な行動予定が定まりつつある。この11月一斉行動に多くの結集を実現し、その声を国会に直接ぶつけていくことが必要である。11月一斉行動の結果によっては、裁判員制度は、現実的にも阻止することが可能な情勢だと思う。

裁判員制度解体の秋がきた。多くの読者のご参加、ご協力、ご支援を求めます。

(「裁判員制度はいらない!大運動」事務局 川村理)

6月13日、恵比寿ガーデンプレイス内のウエスティンホテル東京で開かれた洞爺湖サミットに向けたG8司法・内務相会合は、国際的なテロや国際組織犯罪の捜査情報を幅広く共有することなど、具体的な対策を盛り込んだ総括宣言を採択し閉幕した。宣言は、国際的なテロについて、組織に属さない個人がテロに関与するケースもみられるとして、情報収集の推進や共有を続けることや、国際協力の必要性を強調した。具体的な対策として、G8各国の間で情報交換を強化し、個人識別情報の不正取得をはじめとするID犯罪や薬物犯罪、捜査の情報を幅広く共有すること、発展途上国への法整備の支援を強めることなどをあげた。すなわち、テロ対策の名のもとに、戦争と治安管理体制をさらに強化する宣言である。

21日に閉会した第169回通常国会での成立は阻止したが(継続審議)したが、悪名高い共謀罪が94年ナポリ・サミットで国際組織犯罪が議題として取り上げられたことを起源とするように、サミットでの宣言がどのように具体化するかについて、しっかりと注視する必要がある。同時にサミットを口実とした治安弾圧体制の強化は現在進行形であるがゆえに、さらに重要である。

鳩山邦夫法相を弾劾する

G8司法・内務相会合において泉信也国家公安委員長とともに共同議長を務めた鳩山邦夫法務大臣は、17日、宮崎勤死刑囚ら3名の死刑執行を発表した。鳩山法相はこれで13名の死刑を執行しており、異例の数とスピードでの死刑執行である。この死刑執行は、8日に起きた秋葉原の歩行者天国で25歳の青年労働者が、7人の民衆を殺害した衝撃的な秋葉原事件に対応するものである。鳩山法相は九日当日夜にも秋葉原事件について「人の命を奪うような人にはそれなりのものを負ってもらう」などと発言している。まさしくマスメディアが煽る「殺せ、殺せ」の風潮に乗った「見せしめ」的執行なのだ。

小泉・安部政権が続けてきた新自由主義の暗黒と腐食が一気に流れ出し、日本社会に若者たちの怨嗟の声が満ちあふれている。民衆は「勝ち組・負け組」「正規・非正規」「日本人・外国人」と分断され、競争させられている。とくに若者たちは使い捨てのモノのように売買・酷使されてきた。秋葉原事件の背景には、若者たちを食い物にしてきた日研総業とトヨタグループ・関東自動車工業がいる。だが、彼のまったく正当な怒りが、政府や会社ではなく、同じ民衆に向かったことは残念でならない。個別の怨嗟は社会変革のエネルギーに変換されたとき、真の力を発揮するのである。

サミット逮捕弾圧と対決して闘おう

社会矛盾の深まりのなかで、一切を治安問題に流し込むべくG8サミット警備態勢が強まっている。サミット会場である北海道や関連する閣僚会合が開かれる首都圏、関西、新潟、青森だけでなく全国すべての自治体で学校や病院をはじめとする行政機関や民間をも巻き込む監視、警戒体制がしかれている。「テロ」からサミットを守れ、と全国各地で爆発物や生物化学兵器を想定した対テロ警備訓練、ハイジャック訓練、暴動鎮圧対策などをはじめ、マスコミを使った厳戒態勢キャンペーンが叫ばれている。

北海道では、会場警備に自衛隊まで動員され、監視カメラの増設や公園の使用自粛要請、サミット会場周辺への立ち入り規制、上空の飛行禁止措置のほか、公共交通機関での警備などの監視、警戒態勢がとられている。

6月24日、警視庁は警備会議を開き、サミットに反対する国内外の運動体の動向や警備態勢などを確認した。矢代隆義警視総監は「それぞれ担当する業務を確実に遂行し、警備を完遂していただきたい」と訓示した。サミット治安弾圧は、さらに激しく行われるであろう。すでに、これまでの水準を超えた逮捕弾圧、起訴弾圧がかけられている。

相次ぐ逮捕弾圧

  • 5月13日、福岡県警は7名を組織犯罪処罰法を運動体に初適用して令状逮捕。障害者の生活保護費(他人介護料)を騙し取ったとして「組織的詐欺」にあたるとした。7名は6月3日、全員起訴された。
  • 5月13日、千葉県警は3月30日の三里塚デモの公務執行妨害容疑で二名を令状逮捕し、強制捜索の際、1名を現行犯逮捕した。5月23日、釈放。
  • 5月23日、狭山闘争で1名が対立するグループへの暴行容疑で現行犯逮捕。6月2日、釈放。
  • 5月28日、法大市ヶ谷キャンパスで4月11日の法大警備員に対する傷害容疑で3名が令状逮捕、2名が公務執行妨害で現行犯逮捕された。6月18日、傷害で2名が起訴、3名が釈放。
  • 5月29日、法大市ヶ谷キャンパスで、大学当局・警察一体の厳戒態勢の中、「サミット粉砕!処分撤回」を訴えて学生のデモが闘われたが、100 人を超える警視庁公安刑事が導入されて、29名が建造物侵入、4名が公務執行妨害で逮捕された。6月19日、13名が建造物侵入で起訴、1名が家裁送致、 19名が釈放。
  • 6月5日、奈良県警は野宿者解放活動家を運転免許証を住居地でない住所(実家の住所)で更新したとして免状等不実記載で令状逮捕。13日に釈放。
  • 6月5日、栃木県警は免状等不実記載で一名を令状逮捕。16日釈放。
  • 6月10日、京都府警は派遣ドライバーとして働いていたにもかかわらず、失業給付を受けたとして、詐欺罪で一名を令状逮捕し、全国で数カ所を家宅捜索。20日、起訴。25日、保釈。
  • 6月12日、大阪府警は釜が崎パトロールの会のメンバーを詐欺罪で令状逮捕。被疑事実は、申告外のアルバイトをして、生活保護費を受け取ったというもの。
  • 6月13日〜17日、大阪・西成署で取り調べ中に暴行を受けた労働者の抗議をきっかけに連夜の激しい抗議闘争が行われた。その過程で18名が公務執行妨害で現行犯逮捕。
  • 6月18日、大阪・西成署への抗議闘争に関して労組の委員長を道交法違反で令状逮捕し、労組事務所などを強制捜索。
  • 6月18日、5月29日の法大市ヶ谷キャンパスデモに参加したとして、建造物侵入で1名を令状逮捕。
  • 6月20日、青森県警と警視庁は、青森県の運送会社の集配所から鯨肉を盗み出したとして、グリーンピースのメンバー2人を窃盗で令状逮捕。
  • 6月24日、法大市ヶ谷キャンパスで5月29日に建造物侵入で逮捕・起訴された1名が公務執行妨害で再逮捕。
  • 6月25日、東京・滝野川署は、催涙スプレーの所持を軽犯罪法違反だとして、1名を現行犯逮捕。
  • 6月29日、東京・渋谷で行われた「サミット粉砕」デモで8名が東京都公安条例違反、公務執行妨害で現行犯逮捕。東京都公安委員会は、デモ隊が渋谷駅前で民衆と合流することに恐怖し、強引にコースを変更する「不許可決定」を行い、民衆の怒りを逆なでしていた。
  • 6月30日、千葉県警は免状等不実記載で1名を令状逮捕。
  • 7月3日、大阪・枚方署、電磁的公正証書原本不実記載・同供用容疑で1名、令状逮捕。11日釈放。
  • 7月5日、北海道警は、道路交通法違反、札幌市公安条例違反、公務執行妨害で、4名(うち1名は報道関係者、8日に釈放)を現行犯逮捕。サウンドデモのトラックを押収。

完全黙秘で闘おう

国家権力・警察庁・警視庁は「サミット警備」を口実にして弾圧のエスカレーションを行っている。威信をかけた国家権力との全面対決の闘いであり、被弾圧者は不屈に闘っている。こうした逮捕弾圧にたいして、完全黙秘・非転向の闘いが今こそ重要である。被弾圧者を先頭に救援運動、弁護士など全ての民衆の団結した力で、サミット治安弾圧を跳ね返そう。

4月11日、最高裁判所第二小法廷(今井功裁判長)は判決で、官舎に自衛隊イラク派兵反対のチラシを配った立川自衛隊監視テント村の3人に対し、控訴を棄却して住居侵入罪で有罪とした。

私も最高裁判所の法廷の中に入り裁判を傍聴した。驚いたことに、被告は人が座れる指定席の傍聴席の一画に座らされ、柵の向こうには検察官が1人と、こちら側の弁護士が座っていた。主役は被告人ではなく裁判官であり、私たちは最高裁劇場の聴衆である。

裁判長は表現の自由について一応言及しながらも、「たとえ思想を外部に発表するための手段であっても、その手段が他人の権利を不当に害するようなものは許されないというべきである」と、高裁と同じく一般論を述べるだけで、二分でいなくなり、あまりにもお粗末過ぎる内容に、罵声のひとつも浴びせる気力もわかなかった。これが二年間にわたって「観客」を待たせた末の本番だとすれば、とんだ「茶番劇」だった。

この問題は自衛隊イラク派兵反対に対する政治弾圧であり、それに対する救援という形で運動は広がった。今まで普通にやっていたチラシ入れがなぜ突然犯罪となるのかという疑問の声は、必ずしも政治主張に関係なく発せられるものだった。

公安警察主導で作られた「事件」に対し、マスコミは当初沈黙で答え、私たちはまさにチラシを「配る」という実際の行為で、この問題の不当性を訴え広げていった。問題は、そもそもポスティングなどというささやかな行為を「犯罪」にする公安警察の側の不当性である。

最高裁は、「たとえ表現の自由の行使のためとはいっても、このような場所に管理権者の意思に反して立ち入ることは、管理権者の管理権を侵害するのみならず、そこで私的生活を営む者の私生活の平穏を侵害するものといわざるを得ない」と述べた。

最高裁は3人が立ち入った場所について、「自衛隊・防衛庁当局がそのような場所として管理していたもので、一般に人が自由に出入りすることのできる場所ではない」と述べている。ウソである。

私も朝方官舎に行ってみたが、通学時間には子どもたちが敷地内を通り道にしているし、お友達を迎えにランドセルを背負った子どもが階段を上がっていくこともあった。

私的生活とは、必要な情報だけが与えられて行われる獄中生活のようなものではなく、不快な情報も含めて、それをときどきに自分で判断しながら新しい関係を作ったり作らなかったりする、面倒くさい場所である。しかし、自衛官という肩書きを持つことによって、即座に市民としての権利を奪われ、その挙句に戦場で死ぬことが強要される。それが国家の名のもとに正当化されるのかという当然出てくる疑問を、テント村はチラシにしたため、当事者たちに届けた。

テント村のチラシは直截であるが、やり方はいろいろあっていい。受け取る側もいろいろである。それがメッセージが飛び交い、私的生活が折り重なった市民社会のはずであり、人はそれを民主主義社会と呼ぶ。

昨年、立川・反戦ビラ弾圧救援会は官舎の住民向けにアンケートを郵送した。回答は2通あり、チラシは不快だが、ポスティングは犯罪とは思わないというものだった。

しかし、最高裁の判決は、こういった事実をやはり無視して、被害の程度が軽微でなかったことを述べるのにも、被害届が出されたことに触れるだけだった。この被害届にしても、公安警察が作ったものに、サインをしただけで作られたことが公判の過程で明らかになっている。アンケートの回答は、自分たちの意思が勝手に決められることに対する官舎の住民の明確な意思と読み取るのが自然である。その意味でも、今回の判決は、民主主義社会のみならず、官舎の住民の私的
生活をも息苦しくしていかねない不当判決である。

判決当日夜の報告集会では、この判決が及ぼす影響への危惧の念がたくさん出された。しかし同時に、「ここで萎縮すればするほど判決を認めていくことになる。この判決をどうやって覆していくかが重要。そういう意味で、今回の件で表現の自由の重要性を確認したのは大きかった」という発言もあった。

みんなチラシひとつで、「表現の自由」なんて持ち出すようになるとは思いもよらなかったのだ。それだけに救援も大きく広がった。救援会も「不当判決を認めない運動」を始めた。また148名の連名でこの判決を批判する法学者声明も出された。

当該の1人は「すごろくで言えば振り出しに戻ったわけで、しょせん最高裁なわけですから。今日ここに来てくれた人のほうが最高っすよ」と感想を述べていた。

その意味で、多くの人々の支援に支えられ、ともに反弾圧の運動を行ってきた4年間は実り多きものだった。何より、いち早く救援に駆けつけてくれた、救援連絡センターにあらためて深い謝意を表すものである。

(宗像 充/立川・反戦ビラ弾圧救援会)

日本の戦争・治安管理国家化をめぐる攻防にとって、今春の闘いは決定的に重要となる。政治危機のなかでは必ず治安弾圧・管理が激化するが、とりわけて警戒する必要があるのは、サミット警備の名の下で民衆監視の強化と運動圧殺・解体策動が飛躍的に強化されていることだ。共謀罪法案もきな臭く、法務行政はトップからつま先まで腐りきっている。

サミット戒厳態勢

政治危機のなかで法執行権力が突出し、今年に入って、サミット警備が急激にエスカレートしている。「テロリスト」入国禁止・指紋押捺は既に強行されているが、法務省は、反グローバリズム活動家の闘争参加を阻止するため、入管法のフーリガン条項を適用しはじめた。労働組合や環境保護活動家への適用は初めてのことであり、実際『帝国』の著者であり二十二カ国を訪問してきたネグリの入国すら拒否した。警察庁・警視庁もまた自衛隊と共同した対「テロ」・国民保護訓練を繰り返し、「東京が主戦場」だとして、外国人・反対運動などへの公安シフトを強化する、デモに弾圧を仕掛けるなど、監視・闘争圧殺策動を強めている。暴力的な職務質問も横行している。微罪弾圧を重ね、ありとあらゆる現行法令をギリギリまで使って運動潰しを図る、市民生活を規制するというのが警察の構えである。福田が小泉内閣の官房長官として敷いた『犯罪に強い社会の実現のための行動計画』『テロの未然防止に関する行動計画』はほぼ完成段階にあり、今年前半、これらの暴力・管理・監視を総動員してサミット戒厳態勢を敷こうとしている。政府のいう「テロ」とは「公衆脅迫目的の違法行為」であり、広汎・かつ曖昧な規定で、サミット関連閣僚会議が各地で開かれる4月以降、陸・海・空を問わず各地に戒厳態勢が敷かれるのだ。弾圧に警戒し、共同して反撃しよう。

共謀罪法案をめぐる攻防の現在

共謀罪法案については、現時点では、国会内からコトリとした音も聞こえてこない。ただし、法務委に係属する重要な対決法案は共謀罪法案のみであり、警戒を要する。既に12国会を経ており、動き始めたら早いからだ。国会状況とは裏腹に、共謀罪法案をめぐる攻防全体は一挙に激化し、きな臭くなっている。昨年来の動きをまとめてみると、①07年2月に自民党条約刑法検討に関する小委員会が「テロ等謀議罪」案を公表、②07年8月末、鳩山法務大臣が参院選惨敗のなかでも“サミットまでに成立”と日程を公言。以降「出来るだけ速やかに成立」と繰り返している。国会外では③07年10月、尾崎久仁子国連薬物犯罪事務所条約局長が民主党・日弁連の「新立法なしの条約批准論」批判論文を発表するなど理論的整理を図り、④本年1月には、京都府警が「ウイルス作成」の別件逮捕を仕掛け、マスコミが立法の不備を一斉にキャンペーン(『朝日』『東京』も法案分割の社説)する、更に⑤二月「二重の危険禁止・一事不再理・国際共助」の原則を無視して三浦和義さんを不当逮捕し、共謀罪反対派であった『日刊ゲンダイ』が「三浦が裁かれるのを見てみたい」と御用学者を動員して共謀罪必要論を扇動している。どんなに小さくとも国際的面子にかけて制定・条約批准するために、国会内外を貫いた総力戦を展開してきているといえよう。とはいえ三浦さん逮捕は法的にも綱渡りの攻撃であり、反撃如何では「やっぱり共謀罪は怖い」に行き着く可能性も十二分にある。政府・与党が通常国会で共謀罪を制定しようとすれば激突必至である。どん詰まりでの攻防であり、4月一杯から5月中旬までの衆院強行採決を阻止できるかどうかが大きな節目になる。現代版治安維持法=共謀罪を永久廃案に追い込もう。

法執行権力の腐敗露呈

戦争国家化と併行して、警察・検察・裁判所・監獄の全面再編や、市民を動員する生活安全ネットの全国化が急激に進み、防犯ボランティア団体は3万7千に増加している。対「テロ」戦争や新自由主義的グローバリズムによる弱肉強食社会の国内外を貫く矛盾の噴出に身構え、鎮圧する国家改造が進んでいるのだ。しかし一方で、治安管理国家化は冤罪多発・受刑者反乱など至る所に矛盾を生みだし、反撃も強まっている。アメリカ型の「犯罪は小さな芽のうちに摘め」とする刑事政策は、市民生活を「安全・安心」の名のもとで窒息させている。刑務所を高齢者・障害者などで満杯にし、徳島刑務所では受刑者叛乱まで起きている。精神障害者差別の医療観察法拘禁施設では自殺者まで出、施設収容能力が限界にきている。志布志・富山・北九州と相次ぐ冤罪事件、そしてストーカー殺人まで犯すに至った警察腐敗は、日本の治安政策・刑事政策が何処まで来ているかを示して余りある。また強行されている司法「改革」、とりわけ裁判員制発足をめぐって激突が繰り広げられており、連続死刑の危機も迫っている。暴言実行法相・鳩山の蛮行は彼の個性によるものではないのだ。今こそ、現行刑事政策と警察・検察・裁判所・監獄の腐敗と危険性が根本的に問い直される必要がある。支配総体が腐敗するなかで、これまた腐敗しきった検察・警察が突出する治安管理エスカレーションを許すわけにはいかない。到来した治安管理国家との対決の正念場を共に闘おう!(3月25日)

(1)裁判員制度に対する多くの疑問・反対の声が噴出している。最高裁や法務省が行ったアンケートですらそうだ。裁判員参加に消極的な意見は、○六年一月の最高裁アンケートでは六十一%、〇六年十二月の読売新聞アンケートでは七十五%、〇七年二月の内閣府アンケートでは七十八%である。このような情況下、最高裁・法務省・日弁連執行部は○九年五月までの裁判員制度実施強行に向けて躍起だ。最高裁・法務省・日弁連執行部は、大金を投入し、大手マスコミを使い、有名タレントを登場させ、裁判員制度キャンペーンを行っている。大手マスコミ紙(誌)上では「◎裁判員、一日のスケジュール。多くの裁判は三日以内に終わります。たとえば初日は、こんな一日になります。」とのタイトルに引き続き、次のようにある。「[午前九時三十分頃]裁判所へ お住まいの都道府県にある地方裁判所に行きます。*こどもを保育園にあずけてからでも間に合いますね。」「[午前]選任手続 選任手続では、裁判長が裁判員候補者の事情をうかがいます。その後、六人の裁判員がくじで選ばれます。*ひとりひとりの事情を聞いてくれるんだね。」「[十二時]昼食」「[午後一時過ぎ〜]審理 昼食後、法廷で審理に立ち会います。証人の話を聞いたり、証拠物を見たりして、裁判に参加します。*資料をたくさん読んだりしないんですね。」「[裁判の最終日]評議 審理がすべて終わると、評議(話し合い)が行われます。有罪か無罪か、どのような刑にするかを決めます。*自分の意見や疑問を遠慮なく言えばいいんですね。」「[午後五時頃]帰宅 裁判は、通常一日五〜六時間程度です。*さあ、こどもを迎えにいこう!夕食の買い物によってから帰ろう。」

最高裁・法務省・日弁連執行部はこのような裁判員制度キャンペーンを繰り広げている。ここでは、裁判員制度が【お手軽】で【負担のかからない】ものと描かれている。終わりのあたりは清々しいくらいでもある。裁判は三日以内で終わる、資料をたくさん読まなくてもよい云々・・・。

しかし、裁判員制度は果たしてそんなものか。裁判所に行く暇があるのかという問題もあるが、そもそも裁判員制度は国民を強制的に動員する制度なのである。思想信条による辞退は認めない、評議の秘密は一生口外してはならない等。裁判員制度は決して「権利」ではない。そして、裁判員制度の目的は国民に司法参加を強制することによる治安維持である。〇一年六月に出された司法制度改革審議会最終意見書「Ⅳ 国民的基盤の確立」の冒頭には「二十一世紀の我が国社会において、国民は、これまでの統治客体意識に伴う国家への過度の依存体質から脱却し、自らのうちに公共意識を醸成し、公共的事柄に対する能動的姿勢を強めていくことが求められている。」と述べられている。「公共意識の醸成」とは、国民を裁判員に動員し、目の前の「犯罪者」を裁くこと、刑罰を下すことを強制することによって、治安意識を植え付けることにほかならない。

裁判員制度に対する多くの反対・疑問の声が存在すること自体が裁判員制度の崩壊に直結する。なぜならば、裁判員制度は国民が裁判所に足を運ばなければたちまち立ち行かなくなる制度だからである。最高裁・法務省・日弁連執行部は、裁判員制度に対する多くの反対・疑問の声を前にして、これをかわし、目をそらせるために、裁判員制度が【お手軽】で【負担のかからない】ものであるとのキャンペーンを行っているのである。救援紙上で改めて言うまでもないことかもしれないが、デタラメだ。なお、この間、最高裁は、裁判員制度の広報業務にあたって、契約書を作成せずに発注するなどの「不適切契約」を行っていたことが明らかになった(〇八・一・十一法律新聞)。最高裁の経理局長などに対する処分は「注意処分」にとどまっている。しかし、一方で、住民票移動や運転免許書更新に当たって真実の住所を申告していない、アパートを借りるに当たって真実の目的を秘匿していたなどとありとあらゆる口実をつけて文書弾圧が強行されているのである。この点からしても、裁判員制度キャンペーンがデタラメであることは明らかである。

(2)裁判員裁判は「三日以内」に終わる。正確に言えば、「三日以内」に終わらせるのだ。〈裁判員裁判をなんとしても実現する〉→〈国民を裁判員に動員しなければならない〉→〈そのために安易な辞退は認めない。しかし、だからといって、裁判に時間がかかると国民が嫌がる。〉→〈それでは、裁判を「三日以内」に終わらせればよい。〉ということだ。そのために導入されたのが公判前整理手続である。密室での整理手続により、争点をギリギリに絞り、被告人・弁護人から防御内容を明らかにさせる。整理手続に証拠を提出しておかなければ、後になっては原則提出することができない。このように整理手続でお膳立てをしてしまう。裁判員が参加する公判は単なる「三日以内」で終わる儀式である。裁判員制度によって公判中心主義が徹底するという意見があるが、そうであれば、なぜ公判で全てを行わないのか。裁判員制度と公判前整理手続は被告人の防御権に対する攻撃だ。被告人の防御権という観点が切り捨てられている。このことは、司法制度改革審議会最終意見書が「新たな参加制度は、個々の被告人のためというよりは、国民一般にとって、あるいは裁判制度として重要な意義を有するが故に導入するものである以上、訴訟の一方当事者である被告人が、裁判員の参加した裁判体による裁判を受けることを辞退して裁判官のみによる裁判を選択することは、認めないこととすべきである。」と述べていることから明らかだ。先般、東京地裁は、殺人や強盗傷害などの裁判員裁判対象事件について今年四月から「連日開廷」「集中審理」を行う方針を決めた(〇八・二・七日経等)。裁判員制度の先取りである。

さらに、公判前整理手続きの導入により、検察官の開示証拠の範囲が拡大したとの意見がある。本当にそうなのか。検察官は、弁護人の証拠開示請求に対して、公判前整理手続きを行うのであれば開示してもよいと居直っているにすぎない。公判前整理手続を規定する改悪刑訴法のどこを見ても全面一括証拠開示ではない。仮に開示証拠の範囲が拡大したとしても、肝心の公判が「三日以内」で終わってしまえば、それを十分に活用することは困難である。〇七年十二月二十五日最高裁決定では、犯罪捜査規範で作成を義務付けられている「警官メモ」を証拠開示の対象としたが、警官は、今後、取調べの過程で不都合なことを書かなければ済むことだ。「自白」調書の任意性の問題も同様。被疑者が「自白」しているところをビデオテープで撮影すれば、それだけで「自白」調書の任意性の問題は吹き飛んでしまう。「人質司法」の問題も何ら改善されていない。何億円もの保釈金を納付すれば別だが、そのようなことができる人はほとんどいない。乱発される令状、接見禁止、転向強要など身柄拘束攻撃は執拗に続くのである。救援連絡センターが長年堅持してきた完全黙秘・非転向闘争の重要性はいささかも揺らぐことはない。

(3)これまで救援紙上でたびたび触れられてきたことであるが、裁判員制度は刑事司法改悪攻撃の根幹である。裁判員制度はつぶすしかない。

(弁護士 浅野史生)

安田好弘弁護士は、1998年12月6日、強制執行妨害罪で逮捕され、起訴された。公訴事実の骨子は、安田弁護士が、不動産会社の関係者と共謀して、賃料債権に対する強制執行を免れる目的で、実体のないA社名義の普通預金口座を開設して、賃借人に賃料を同口座に振込入金させて、強制執行を妨害したというものであった。

最高刑が2年の強制執行妨害罪において、実に296日もの間、身体を拘束され続けた。安田弁護士は、代理人もしくは弁護人として活動してきた法廷に、手錠と腰縄を付けさせられての入廷を強要され、保釈が認められた後も「被告人」として法廷に立たされ続けた。そして、検察官は、最高刑の2年を求刑し、債務者であり不動産会社の経営者であるS社長よりも重罰を求めた。

これに対し、1審は、膨大な証拠を詳細かつ緻密に検討した上で、無罪を言い渡した。川口裁判長は「今度、法廷でお会いする時には、今とは違う形でお会いできるということを希望します」と言った。もちろん、弁護人として会いたいということである。しかし、検察官は、控訴し、安田弁護士を引き続き「被告人」として法廷に立たせ続けた。

控訴審は16回の公判が開かれ、昨年11月14日の弁護人の弁論で結審した。実に、安田弁護士が逮捕されてから、丸9年が経った。そして、控訴審の判決言い渡し日は、今年4月23日午後1時30分となった。偶然にも、安田弁護士が主任を務める光市事件の判決言い渡し日が4月22日なので、その翌日になる。

控訴審には新証拠はない

控訴審において、検察側の事実取調請求は、証人としては、「共犯者」のIとS、そして捜査を担当した浦田検察官の各証人が採用されたが、書証については、弁護人が同意したものを除き、全て却下された。

しかし、I証人らの証人尋問の結果は、全て1審の繰り返し、むしろ、弁護人の主張に沿う証言さえ出てきた。結局、控訴審で新たに取り調べられたのは、浦田検事しかない。即ち、検察官は、全く同一の証拠について、裁判所による見直しを迫っているだけなのである。

浦田検事の登場

浦田検事の主尋問は1期日、反対尋問が3期日実施された。問題となったのは、本件が2億1000万円の従業員横領であった事実について浦田検事は知っていたか(隠そうとしたか)ということである。警察は、口座からの2億1000万円の現金引き下ろしの事実をつかんでいたからこそ、強制執行妨害罪として確信し、S社長らを逮捕し、開口一番「2億1000万円はどこに行った」と尋問・追及した。警察の捜査報告書には、「約2億1000万円については被疑者の隠匿金と推定される。強制捜査等を実施した上で事実解明したい」と記載されていた。ところが、この2億1000万円についてはS社長は全く知らず、O証人ら従業員がS社長に内緒で横領して分配していたことを警察は知る。O証人が警察に呼ばれた際、その事実を説明したからだ(O証人は、その際、警察から「時と場合によっては犯罪になる」と言われたと証言した)。そして、この2億1000万円の追及が突然消えていく。浦田検察官は、これについて「特に捜査したことはない」「私自身の捜査の重点はむしろそこじゃなかった」と繰り返し、驚くべきことに、警察の捜査報告書についても控訴審で見せられてびっくりした、「ピントはずれの捜査」とまで証言したのである。しかし、経済犯において隠匿賃料がどこに行ったか捜査することが「ピントはずれ」であるはずがない。

浦田検事は、まさに自らの設定した事件の構図にあてはまる事実だけを拾い上げ、構図に当てはまらない不利な事実は、取り上げなかったのである。

「やっていないからです」

安田弁護士は、会社の膨大な帳簿を精査していると、ある時、200万円が現金で「行徳支店」から引き出されていたことも分かった。S社は六本木に本社があり行徳とは関係がない。行徳は、経理担当であるO証人の自宅近くである。この安田弁護士の小さな発見を、反対尋問で弁護人が大きく追及することになり、 O証人は、自ら現金を引き出したことを認め、「私、自分ので使ったのかもしれません」と個人着服を認めたのである。

安田弁護士は、ワープロも計算機もない獄中で、手書きで計算した。ホッチキスもマーカーもない。コピーもできないし、はさみも持てない。被告人質問で、弁護人は、安田弁護士が精査したS社の総勘定元帳などの膨大な書証を証人台に積み上げた。すると、証人席に座っていた安田弁護士からは、山のように積み重なった書証が邪魔になって、壇上の裁判官が見えなくなった。

「結局そこまでして、どうして証拠を、これ以外にもたくさん山になる証拠があるんですけれども、あなた自身が調べたんですか」。

「それは単純ですよ。私、やっていないからですよ」。

安田弁護士を「被告人」の束縛から解き放たなければならない。

昨年12月7日、法相鳩山邦夫の命令により、3名の死刑が執行された。

06年12月25日に4名を処刑して以降、長勢前法相は07年4月、8月と3回計10名もの死刑を執行した。引き継いだ鳩山は就任後わずか3ヵ月半で執行に踏み切ったのであり、1年の間に13名もの死刑が執行されるという異例の事態となった。過去10年間を見れば死刑執行数は徐々に減り、年に 1〜3名程度だった。しかし昨年の執行数は9名と過去30年間で最高の数となり、死刑強化へと大きく転換しようとする国家権力の意図が現れている。

法相就任直後から鳩山は法相が死刑執行命令書にサインしなくても執行手続ができるようにする「死刑の自動化」を提案したり、絞首刑による執行方法への疑問を示すなど死刑制度のあり方を検討する勉強会を法務省内で開いてきた。その実態はテロ対策や犯罪被害者の権利重視を掲げて治安弾圧強化・重罰化を図る司法改悪と一体となった死刑を強化する攻撃なのだ。

法務省はこれまでは死刑執行の事実しか公表しなかったが、今回は執行された死刑囚の氏名と犯罪事実、執行場所を公表した。

これまでは秘密裏に行っていた死刑執行を、被害者や国民の理解を得るために情報公開するとして、実際はいかに残虐な事件かなど法務省にとって都合のいいところだけを強調し、死刑執行を正当化するために情報を操作しているのである。

執行された死刑囚が判決には誤りがあるとして、弁護士の援助もないままに自力で再審請求していたこと、長期の拘禁で精神的に不安定になっていたこと、高齢者だったこと、家族や友人・弁護士との面会や文通が全くなく孤立していたことなどの事実は公表されない。

今回の執行のもう1つの特徴は、国会会期中の執行であり、執行当日の国会質問で、鳩山が執行したことを認めたことである。7日昼の衆院法務委員会で細川律夫議員の質問に答えて、鳩山は「国家権力によって人の命を絶つわけで、斎戒沐浴(さいかいもくよく)してサインさせて頂いた。大きな心の痛みを感じるが、法に基づいて粛々と実行しなければいけないということで、逃げることのできない責務と思って執行させて頂いた」と答えた。質問されることを予測して準備した、いかにも国民の心情受けを狙った答弁である。死刑の政治性を隠し、心情に訴えることで死刑執行を正当化し、死刑強化の世論を形成していく傲慢な宣言である。

執行された3名

東京拘置所で死刑執行された藤間静波さん(47歳)は、神奈川県で81年に金のトラブルから友人を刺殺し、82年には女子高校生から交際を断られたことに怒って、女子高校生とその母親、妹を刺殺、さらにはその共犯者をも口封じのために刺殺したとされる。

1審は横浜地裁で88年に死刑判決。控訴審の途中の91年に本人が控訴を取り下げたが、弁護人が控訴の取下は無効との訴えを起して、精神鑑定が行われた。しかし東京高裁は弁護人の訴えを棄却。異議申立も棄却されたが、弁護人は特別抗告した。95年に最高裁は弁護人の特別抗告を認め、異例の審理再開決定を出した。「死刑判決を受けた被告人が判決に不服があるにも関わらず、ショックなどで精神障害となり、その苦痛から逃れるために控訴を取下げたもので、手続は無効」「取下時は自分の権利を守る能力が著しく制限されていた」とした。

しかし東京高裁は2000年に控訴棄却。04年6月15日に最高裁が上告棄却して、死刑が確定していた。確定後は親族や友人・弁護士との交流は全くなく、昨年6月からようやく1人の救援関係者との外部交通が認められるようになった中での執行であり、確定からわずか3年半という異例の早さでの死刑執行だった。

同じく東京拘置所で死刑執行された府川博樹さん(42歳)は、99年に女性との交際費に困って東京の知人女性に借金を申し込んだが断られ、女性とその母親を刺殺したとされる。

1審は東京地裁で01年3月に死刑判決、同年12月には東京高裁で控訴棄却されるなど、異例のスピード判決である。その後上告はしたが、03年に自ら上告を取り下げて死刑が確定した。外部との交流もなく、本人の状況は全く伝わってこなかった。99年の事件から4年も経たずに死刑が確定した事件であり、十分な審理が尽くされたとは言えず、弁護人の弁護を受ける権利も保障されていなかった。

大阪拘置所で死刑執行された池本登さん(74歳)は、86年に徳島県で隣人が自分の畑にごみを捨てるなどの嫌がらせをしていると思い込み、散弾銃で隣人夫婦と近所の人を射殺したとされる。

1審は徳島地裁で無期懲役の判決。検事控訴されて89年には高松高裁で死刑判決。96年最高裁で上告棄却され死刑が確定した。その後弁護人なしのまま自力で再審請求をしていたが、再審請求が棄却され、次の請求を準備中に執行された。1審は無期懲役だったこと、再審請求の弁護人がついていなかったこと、 74歳と高齢だったことなど問題点が多い。

死刑停止の国連決議

12月18日、国連総会は「死刑執行の停止を求める決議」を賛成104、反対54、棄権29で採決。日本は反対した。国際社会が死刑廃止に大きく動き出しているにも関わらず、日本は死刑を存続するか否かは内政問題という立場でこの決議には従わないと公言している。アメリカでも死刑を巡る議論は活発化しており、薬物注射による死刑執行は憲法違反とする訴えを連邦最高裁が審理中のため、死刑は執行停止されている。韓国も10年以上死刑執行が行われていない事実上の死刑廃止国となるなど、世界が大きく死刑廃止に向かう中で、日本が死刑を強化し、執行数を増加させようとすることを許してはならない。

麻原彰晃氏控訴審弁護団に対する懲戒請求事件の現状と問題点について報告致します。

本年2月、日弁連は東京高裁第10刑事部裁判官による私と松井武弁護士に対する処置請求を却下し、その直後3月7日、東京高裁事務局長山名学が懲戒を申し立て、本年10月22日、仙台弁護士会綱紀委員会は、委員による麻原氏との接見・検証等を実施した上での決議を求めていたにも関わらず、全くしないまま先行する2件の懲戒申立と合わせて「懲戒委員会の審査に付する」とした。一方、第2東京弁護士会の松井弁護士については、綱紀委員会の段階であり、12月19日に第2回目の調査期日が開かれることになっている。

東京高裁事務局長山名学による懲戒請求は、事務局長印も押されているが、法律上は高裁事務局長は司法行政上の権限として弁護士に対する懲戒請求権は認められていないのであり、山名学という個人が請求したとされているが、権限外のことで公印を使ったのだから公印の不正使用に当たらないか、第10部の裁判官しか知り得ないことを何故に山名学が個人として知ることができたのか、第10部の裁判官が秘密を漏らしたのかということにもなる。

東京高裁は、何故にかくも執拗に私たち対する処分を求めるのか。今日の裁判ないし司法、特に刑事裁判について、簡易、迅速、厳罰化という流れと軌を一にすると思われる。裁判の迅速化法もでき、裁判員制度を大義名分として簡易で迅速な審理が声高に叫ばれ、厳罰化が進み、それらを実現するために訴訟指揮権が強化され、従わない弁護人は処分される。被害者保護の名の下に結果的に極めて厳しい判決が出されるということが既に始まっている。秋田県藤里町の事件は去年の春頃発生した事件であるが、起訴されてから1年経った今年の9月が第1回公判であり、その間裁判所では事前準備手続が行われていて、今までは公開の法廷で国民の目に見えるところで行われていた訴訟手続が、全く見えないところで行われ、最後に残った証人尋問や被告人質問だけが法廷で行われている。裁判員が関わるのは、その最後の証人尋問辺りからでしかない。

このような手続になった時には尚更のこと、被告人の利益を考えて行動できるのは弁護人であるが、その弁護人が裁判所の訴訟指揮に従わない場合には処置請求や懲戒請求をされる。弁護士会は当の被告人本人に接見して事情を聴取するという最低限度のこともしないまま弁護士に対して懲戒相当との判断を下す。真剣に刑事弁護を行っている弁護士にとっては、威嚇的、萎縮的効果が極めて大きい。オウム真理教の事件自体は特殊な事件ではあるが、刑事弁護という点では普遍的なものであり、裁判所と激しく攻防を行うと処置請求さらには懲戒請求が待っているという未来図を私たちの事件は示している。裁判所はそういう威嚇的効果を十分に見込んで処置請求、懲戒請求を繰り返している。

去る11月15日、日弁連人権擁護委員会は、東京拘置所に対して麻原氏が重篤な拘禁症状に罹患している疑いが強いので然るべき医療施設に入院させた上適切な治療を行うようにとの警告を行った。私たちの人権侵害救済申立に対して日弁連人権擁護委員会が私たちとほぼ同様の見解に基づいて治療を行うべきであるとの結論を下したのである。特筆するべきは、同委員会の委員の方々が実際に東京拘置所に赴いて自ら麻原氏と接見した上で、結論を出した点である。麻原氏が正常な精神状態にないことは直かに接見して問答を試みることによってかなりの程度明らかになる。麻原氏と直接接見して精神病と判断した弁護士は、控訴審以降の弁護人以外では初めてであり、弁護人でない弁護士が見ても重篤な精神病と判断された事実は大きい。

麻原氏の刑事事件は死刑判決というこれ以上ない重大な事件であり、同氏の訴訟能力、精神病は、死刑判決が確定とされて正しかったのか、そして訴訟能力を争った弁護人の活動が誤りであったのか、非行として指弾されるべきものであるのかという問題に他ならない。弁護士会の綱紀委員会及び懲戒委員会は、まずは麻原氏に接見してその容態を自らの目と耳で検証することを願う。その上で、私たち両名に対して懲戒処分を行うことが、弁護士のみならず人々の利益に叶うものであるか否かを真剣に検討して頂きたいと願うものである。

(弁護士 松下明夫)

10月9日、宮崎地検は、東京弁護士会所属の山本至弁護士(44期)を「脅迫」容疑で逮捕し、宮崎刑務所に勾留した。被疑事実は、新聞報道によれば、詐欺被疑事件で逮捕された男性の弁護人として昨年11月麹町署において接見した際、「完黙はきついです。正直に話したい」と申し出た被疑者に対し、「…余計なことをしゃべったらどうなっても知らないぞ」等と「脅迫」したとされている。同弁護士は、一切身に覚えのないことであるとコメントしているとのことである。

山本弁護士は、昨年11月9日、宮崎地裁で担当していた刑事裁判で、真犯人が別にいるとの証拠(文書)を提出したところ「証拠隠滅(証拠偽造及び使用)罪」で宮崎県警に逮捕され、自宅・事務所の捜索を受け、接見メモなど事件記録を押収された(同年11月30日起訴)。本年1月に保釈され、9回にわたる公判前整理手続期日が9月下旬に終了して、10月11日から第1回公判を迎えるところであった。

東京弁護士会(下河邉和彦会長)は、10月11日付で、「山本弁護士の逮捕は、無罪を争う裁判の第1審の判断も未だ下されていない段階で行われたものである。まさに検察と弁護が鋭く対立している最中に行われたものであって、到底許されないところである」との会長談話を発表した。

山本弁護士が担当していた事件は、盗品等有償譲渡(振込め詐欺に使用する預金口座通帳の売買)にかかる否認事件である。その捜査・公判担当検察官が、こともあろうに担当弁護人を「証拠隠滅罪」をデッチ上げて逮捕・起訴したということ自体、突出した攻撃であった。しかも押収した弁護人の接見メモを使用して、公判中の被告人を取り調べるという前代未聞の暴挙を行っているのである。もとより同弁護士は、「証拠隠滅」事件について全面的に争っており、400人を超える弁護団が形成されている。その第1回公判の2日前に同弁護士を再逮捕し、またしても身柄を拘束したのである。

この間、権力による弁護活動への介入、妨害、抑圧攻撃は、「司法改革」の推進と共に拡大・増悪化している。「偽証教唆」を口実とする仙台の弁護士への事務所ガサ、懲戒請求、鹿児島県議選公選法違反事件(2007年2月23日無罪、検察控訴せず確定)の国選弁護人解任、接見内容の取調(接見状況を取り調べた調書75通、現在国賠提訴中)、ウィニー著作権法違反事件における証拠の「流出」(目的外使用)を口実とした弁護攻撃、東京高裁須田裁判長による麻原弁護団への「審理の迅速な進行を妨げた」ことを理由とする日弁連への処置請求、東京高裁「事務局長山名学」名義による懲戒請求、最高裁による光市事件弁護人への出廷命令発動、マスコミの反弁護士キャンペーンによる大量懲戒請求攻撃等々。もとより、こうした攻撃は、司法改革にひれ伏し、その尖兵となり下がってより悪辣な「改革」に突き進みつつある日弁連が屈服し忠誠を誓えば誓うほど拡大してきている。

今回の山本弁護士の脅迫デッチ上げ逮捕事件は、こうした弁護士・弁護活動攻撃をさらにエスカレートさせたもので断じて容認できない。

第1に、同弁護士に対する証拠隠滅事件の初公判期日直前の逮捕であり、その「被疑事実」は1年も前のものである。これから週1回の証人調が行われるという重要局面に至っての本人逮捕は、防御権行使そのものを直接妨害するためになされたものという他はない。警視庁管轄の麹町署での接見を被疑事実としていながら、宮崎地検が逮捕し、身柄を宮崎に持っていくということ自体異例である。

第2に、検察側は、この逮捕に伴い、同弁護士の事務所及び自宅のガサ入れをまたしても行い、同弁護士が過去に担当した刑事事件の事件記録や、同弁護士のパソコンを押収し、パソコン在中のデータ(弁護団や支援する会とのやり取りなど)を全て収得したということである。検察が対立当事者である弁護側の資料や情報をガサで押収するなど言語道断である。

第3に、今回の「脅迫」デッチ上げは、被疑者と弁護人との接見内容を取り調べの対象とした点で根本的に許されない。このようにして弁護人に対する不信を煽り、かつ弁護活動を牽制するという手口は否認事件や黙秘事件で最近目立っている。こんなことが許されれば、警察、検察の手先としての弁護活動しかできないことになる。

第4に、このようなデッチ上げによって黙秘や否認事件の弁護活動自体を妨害し、弾圧しようとしている。この矛先は、いまでもなく救援連絡センターの原則である「完黙・非転向」の闘いに向けられている。「転向者」が「弁護士に黙秘を強制された」と言いさえすれば、即その弁護士を脅迫罪による刑事弾圧の対象としうるのだ。かくて、本件は、救援連絡センターが永年にわたり構築してきた「完黙・非転向」の原則への重大な挑戦でもある。

刑事司法改悪の現実化としてますますエスカレートする弁護攻撃を完黙・非転向で打ち砕こう。なお、山本弁護士は、10月29日、脅迫罪と証人等威迫罪で起訴されたとのことである。

(弁護士 遠藤憲一)

この夏は、酷い暑さでした。熱中症で倒れる人が多かった。獄中でも、明確な原因が公表されていませんが、何人かの方が亡くなっています。

一般社会では、体調を崩した場合、すぐに医師に診て貰い、治療をして貰い、薬を処方して貰うことができます。しかし、留置場・拘置所・刑務所で拘禁されている人たちは、人権がない、ましてや満足な医療もないという状況にあります。「犯罪者」だからと言って、獄中者だからと言って、人権もない、体調不良を訴えても満足な治療さえして貰えないなんて酷い話です。最近、シャバにおいても健康保険料が支払えない人に対して行政が健康保険証を取り上げ、治療できなくさせて、死なせてしまうということが繰り返されています。まるで映画「シッコ」の世界です。シャバでさえそうなのですから、獄中医療の現在が、さらに酷いものであることは明らかでしょう。

受刑者処遇新法施行による処遇の変化の結果、「救援」読者に占める獄中者の割合がとても高くなっています。その獄中者から多く寄せられる手紙の中で目立っているのが、獄中医療の問題です。昔から獄中医療は劣悪でしたが、最近はさらに酷くなっているようです。以前は、医師による診察・治療がなくても薬は出してくれましたが、この頃はその薬さえ余り出さなくなったとの報告が目立つようになりました。

今回、救援連絡センターでは、獄中医療の現状について調査することにしました。実態が正確に把握されなければ、その問題にどう対処していけばいいのかも分かりません。

そこで、獄中医療の実態について、20年ぶりにアンケート調査を行いたいと思います。20年前は、獄中者が中心になって実態調査を行いましたが、今回は、前回のアンケートの質問項目と統一獄中者組合から頂いた参考意見を元にアンケート用紙を作成しました。獄中体験のある方のご協力をよろしくお願いします。

(事務局 宇賀神寿一)