人口80万人の世田谷区で、とんでもない憲法違反、人権侵害、地域監視体制の治安「条例」が制定された。5月14日に条例案が区議レベルで明らかになった「世田谷区安全安心まちづくり条例」である。固有名詞は一切出てこないが、目的は現在区内烏山に集団で居住し活動しているアレフ(旧オウム真理教)の信徒たちを、税金を支出して一部住民と行政が「監視」「規制」していくことであるのは明白である。
条例中の核心部分を引用する。
「第5条 区は、無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律に基づく処分を受けた団体等による集団的活動その他これに類する行為により、区民が安全で安心して生活することが妨げられるおそれがあるときは、そのことから生ずる住民の生活への影響等を速やかに調査するとともに、区民が安全で安心して生活することのできる社会の確保に資する事業を行っていくものとする」。
区民による反対運動が展開された。
「世田谷区安全安心まちづくり条例制定に反対する区内在住学者・文化人緊急声明」内藤隆(弁護士)國弘正雄(英国エジンバラ大学特任客員教授)等〈…区が本条例案の根拠としている団体規制法は、当該団体の活動を不可能にする「観察処分」や「再発防止処分」を公安調査庁に認めることを内容としており、九九年の国会審議過程から、適性手続や令状主義を逸脱した、極めて憲法違反の可能性の高い法律であることが指摘されてきた。…さらに本条例案には「その他これに類する行為により」「前条に規定するおそれがあるときには」といった表現によって「団体規制法」以上に運用の幅を持たせており、より憲法違反の可能性の高い条例案であると言わざるを得ない。…このような憲法違反の疑いのある条例を制定しようとすることは、安全安心どころか住民の不安を増幅するだけである。また、このような住民の基本的人権を侵害しかねない条例について、ほとんど審議時間を費やさずに制定しようとしている世田谷区の姿勢は、司法の判断をも尊重することなく一部住民の転入届を不受理とする対応を続けてきた事ともあわせて、民主主義を破壊する暴挙であり、看過することはできない〉
60年代末、街頭闘争時の町内・自治会の「自警団」的組織化、70年代の党派の「内ゲバ」や「爆発物」「多発」を口実とした町内会による活動家「追放」策動をも含めたCR作戦、ごく至近ではワールド・カップ試合会場、あるいは都内盛り場にもフーリガンが登場するという口実での町内・自治会を巻き込んでの移動民たちへの排外・監視活動強化の流れの中にある条例である。国家レベルで地方自治体を巻き込み有事法制、地域では「安全」条例と個々人の生き方、活動を縛る法律が蜘蛛の巣のように張り巡らされようとしている。短期間で議会対策を進めたが6月20日の本会議で賛成多数により可決された。大きな問題は反対区議が無所属の2人だけという現実である。既成政党、生活者ネットも条例の本質を捉えられず、「アレフ」対策という名目に屈服した。
反対の無所属、木下泰之区議(元旧社会党)は「区長の態度は無法者と同じである」「治安を守るという自警団の思想は関東大震災時の自警団を想起させる」「5条に関わる団体規制法は違憲のそしりを免れない」など、区長による条例提案を徹底糾弾し、12分にわたり反対の理由を明確に述べた。もう一人の無所属議員も「世田谷区長が司法を批判し〈自ら区民を守る〉と発言したことは法支配への挑戦」「オウム対策の〈まちづくり協議会〉は区と警察の「官」で組織され一般区民を監督するものであり、自警団、隣組をほうふつとさせる」「基本的人権は失われた」と述べた。
この現憲法下で地方自治体としては最悪の違憲条例、地域治安条例、自警団に税金を支出する「世田谷区安全安心まちづくり条例」は制定されたわけであるが、今後もこのような「条例」を容認することなく反対の動きを広めて行きたい。